わが国の瞬時電圧低下(以下、瞬低と略す)に対する実態や対策については、平成2年発刊の電協研第46巻第3号「瞬時電圧低下対策」で取りまとめられています。それから約20年が経過し、瞬低に関するPRや対策技術は着実に進んできてはいるものの、瞬低補償装置の導入状況は十分とは言えず、近年においても瞬低により工場の機器が停止し、多大な影響が発生した事例などが確認されています。
一方、需要家が使用する負荷機器は、ライフサイクルの変化やインバータ機器の登場などにより大きく変化してきており、その瞬低に対する停止特性も変化してきております。また、分散型電源に目を転じると太陽光などの発電装置のインバータは瞬低により停止することが知られており、今後、これらが大量に導入されると、瞬低に伴う一斉停止によって電力系統に何らかの悪影響を及ぼすことが懸念されています。
他方、電力品質の国際規格化が進められている中、欧州では負荷機器の瞬低の耐性に関する規格化を目指す動きもあり、わが国としてもその動向を注視していく必要があります。
このような背景から、電気協同研究会は「電力系統瞬時電圧低下対策技術専門委員会」を設置し、約2年間にわたる調査研究を進めて参りました。
本書は、その研究成果をとりまとめたもので、瞬低現象と発生状況、瞬低の影響、瞬低対策の現状をフィールド調査・アンケート調査・実験データ等を基にとりまとめるとともに、負荷特性の変化並びに分散型電源による影響を今後予測される課題として記述しております。
さらに電力系統側・負荷側・分散電源側の技術動向を踏まえ、将来への提言まで踏み込んでとりまとめられており、電力部門の関係者の方々をはじめ、瞬低対策をご検討されている需要家の皆さま、電気技術者や電気技術者を目指す方々にまで広くご活用いただけるものと確信しております。より多くの皆様からのお申し込みをお待ちしております。